
錆びに強く、熱にも耐える、強度があり、見た目も美しい素材、ステンレス。ステンレスが発見されて100年、この記念すべき時期に、ステンレスの新たなスタンダードとなるFW(フォワード)シリーズ商品を開発。ここではその開発の取り組みを紹介しよう。
「ステンレスは錆びない」というのが一番面白いところです。普通の鉄は錆びますよね。鉄に10.5%以上のクロム(Cr)を含んだ合金鋼をステンレス鋼と言います。ステンレスは表面に「不動態皮膜」というクロム酸化物が形成されるため、錆びにくいんです。
また、ステンレスは普通鋼に比べて研究・開発の範囲が広いと言えます。普通鋼の場合は、ほとんど調べ尽くされているため、新たな大発見をすることはなかなか難しいのですが、ステンレスは誕生から100年しか経っていませんから、新発見の可能性を十分に秘めている材料なんです。クロムだけでなく、ニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)などの希少金属の配合を変えるだけで、まだまだ新しい機能を持ったステンレスを開発できると思います。
そのような研究開発の中で商品化されたのが、FW(フォワード)シリーズです。FW1(フォワード・ワン)とFW2(フォワード・ツー)という二つの商品がありますが、共通する特徴は世界で初めて「錫」を添加したという点です。実は「錫」という元素は、鉄に添加すると、熱間加工性が悪くなってしまい、割れてしまうんです。鉄にとって、錫は劇薬なんですね。だからこれまで誰も使ってきませんでした。それなのに、NSSCには変わった研究者がいました(笑)。 粘り強く研究を続け、試行錯誤を続けていく内に、ある条件で錫を配合すると全く割れないことを探し当てたんです。それどころか、錫は不動態皮膜の安定性と保護性を高める効果があるということを発見したのです。
また、近年ステンレスの製造に欠かせない原料であるニッケルやクロムの価格が乱高下しており、FWシリーズは少しでも価格を安定させるため、クロムを低減する研究にも取り組みました。FW1は、錫を0.1%程度加えることで、クロムの添加量を23%低減、FW2では約40%も稀少金属を低減させることに成功しました。
このFWシリーズは、2010年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日経産業新聞賞を受賞しました。世界初の錫添加技術であることはもとより、徹底した省合金化により合金資源の節約に繋がった点も、高く評価していただきました。
NSSCは住友金属と新日鉄のステンレス事業を統合して出来た会社ですが、住友金属では錫添加の技術を研究してきました。それに新日鉄の強みであった高純度フェライト系技術を組み合わせて、世界のどこにも無いステンレスが誕生しました。この会社が設立されて、生まれるべくして生まれた開発です。
私は、入社から最初の10年くらいは研究所に所属していました。その後、製鉄所の品質管理部門や、マネジメントを担当し、現在は商品開発部長です。
今では自分で研究開発をすることはありませんが、担当者時代は、一つのテーマについて徹底的に研究を重ねていました。「どんなに突き詰めて研究しても、新製品誕生に結びつかないんじゃないか」という不安は常にありましたが、それよりも自分の好きなテーマを研究できるんです。研究に没頭していたことを今でもよく覚えています。
研究者の仕事にかける情熱と執念がなければ、FWシリーズも誕生しなかったでしょう。NSSCには情熱を傾けて研究に没頭している仲間がたくさんいますよ。この姿勢に共感して入社してくれる学生さんをお待ちしています。
ひらめき・運・偶然は発明につきものですが、材料開発には事実関係をサイエンスの目線で突き詰めていく地道な努力が何よりも大事です。FW1は偶然にも錫(Sn)と出会って概ね10年の時を経て世に出た商品です。これからも新たな商品を開発していきますので期待してください!
FW1(フォワードワン:商品名)を7月にプレスリリースしてからは、これまでお付き合いしているお客様以外にもホームページを介して多くのお客様から問い合わせを頂いています。商品のPRに飛び回り、品質や経済性からもFW1を評価頂いております。
FWシリーズは、製造部隊としても渾身の技術を投入した商品であり、この新しい材料の性能を最大限に引き出す製造条件も確立しました。苦労しましたけど(笑)。発表以降、お客様からの問い合わせや引きも切らないサンプル要請を目の当たりにし、この商品に対する期待の大きさを感じています。プロパー生産も始まりましたので、いち早くこの商品のすばらしさをお客様に感じていただきたいですね。
日本で年間どのくらいの特許出願があるかご存知ですか? な、な、なんと35万件!!我が社でも沢山の特許を保有していて、このFWシリーズも、もちろん国内外に出願しています。私は、その特許の一生(特許の権利期間は出願から最長20年)を支える業務を行っています。特許は、我が社の技術競争力を保護する大きな武器です!
私は主に品質設計・カタログ管理のお仕事をしています。実はステンレスって種類がたくさんあるんです!薄板と言われる品種だけでも様々な鋼種や仕上があります。たくさんありすぎて勉強するのが大変ですが…。また、私たちの生活を支えてくれているのもステンレスです。街でステンレスを見る度に自分の仕事に誇りを持つことができます!